8-3. 融合タンパク質の作製
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遺伝子工学を利用してタンパク質を発現させる方法
ベクターにすでに備わっている既存タンパク質(あるいはペプチド)生産系を借用し、既存タンパク質と融合するようにして新奇タンパク質を発現させる方法
簡単で扱いやすい
自前の開始コドンから発現させる方法がある
1) β-ガラクトシダーゼ(β-gal)融合タンパク質
lacPOZカセットをもつベクターを利用する
通常、β-galα領域のコード領域の上流部分にMCS(マルチクローニング部位)があるので、その部位で制限酵素切断し、そこにコード領域をもつ目的cDNAをコドンの読み枠を合わせて組込む
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β-gal融合タンパク質大量産生の手順
作製した発現ベクターで形質転換した大腸菌を培養する
増殖性の高い対数増殖期中期まで増えた段階でIPTGを加え、さらに1時間ほど増殖を続け、その後勤怠を遠心分離で集める
超音波処理で菌体を壊した後、遠心分離をして上清を可溶性タンパク質分画として回収する
適当な方法で、精製タンパク質を得る
2) タグ付きタンパク質とその精製
タグとは
検出や精製を目的にして、タンパク質に連結させるペプチド鎖をタグという
タグをコードするベクターを用い、コード領域の先頭(頭部分はATG)、あるいは最後尾にある制限酵素認識部位に、読み枠を合わせて目的のcDNAを挿入する
主なタグとその利用法
Hisタグ
ヒスチジンが6個並ぶ
小型タグで、タンパク質本来の性質がそのまま出やすい
精製用のタグとして優れている
ニッケルカラムを用いたHisタグ付きタンパク質の精製
ヒスチジンのイミダゾール環がニッケル原子と結合する性質を利用する
GSTタグ
GST(グルタチオンS-トランスフェラーゼ, 分子量35,000)をタグとして使う
GSTと特異的に結合するグルタチオンを使ってタンパク質をカラムから外す
タンパク質が不溶化しにくくなる
タンパク質結合解析の1つ、GSTプルダウン法に使用できる
FLAGタグ
8個のアミノ酸(DYKDDDDL)からなる人工の小型タグ
特異的抗体を用いた免疫沈降やタンパク質検出などに利用される
GFPタグ
蛍光で検出でき、生細胞中でも使えるので、細胞内存在部位を観察することができる
上記以外にもいくつかのタグがある(mycタグ、マルトース結合タンパク質タグなど)
タグの利点
抗体を使った高感度のタンパク質の検出が主な利用法であり、抗体が利用できない場合は、唯一の検出方法
タグとの特異的結合を利用すると、目的タンパク質の精製ができる
GFPタグは生細胞中での検出が可能
タグの欠点とその克服法
タグによる人為的性質が現れることがあるが、生成した後でタグをペプチドから切り離すことが可能
3) ファージディスプレイ
ファージの殻タンパク質に異種タンパク質が融合したファージをつくらせ、異種タンパク質をファージ表面に出させ、そのタンパク質との結合性を指標にファージ産生細胞を選択する手法をファージディスプレイという
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M13ファージが使われることが多い
不特定多数のcDNAでこの方法を使うと、目的タンパク質とその遺伝子の検索・単離、すなわち発現クローニングが同時に行える
結合性によってクローンを選択する親和性選択の1つ
抗体遺伝子に応用すると、動物への免疫操作を経ずに単クローン抗体を得ることができる